バービーロールモデルインタビューサイト
プログラマー
なにかを面白がる好奇心と
創造力があれば
人生に遅すぎることはない
若宮 正子
Wakamiya Masako夢を見る余裕もなかった
少女時代から会社員時代
私の子どもの頃は、戦時中という特殊な時代でした。空襲に怯え、食べ物にも困る、明日どうなるかわからない暮らしでした。そして、戦後は日本そのものが大きく変わっていった。夢をもつということからはほど遠い少女時代だったのではないかと思います。
世の中が少し落ち着いた頃、私は銀行に就職したのですが、異例なことに高卒の女性でありながら企画管理部門に配置転換されました。そこでは、やりがいのある仕事を与えられ、恵まれた会社員人生を送ったと思いますが、でもそれは極めて現実的なことであり、夢を持つような余裕はありませんでした。
60歳を過ぎて得た
個人として生きる自覚
私が、自分のやりたいことをやり、自分の気持ちに沿った生き方ができるようになったのは、60歳を過ぎてからですね。退職した頃から、パソコンに触れるようになったのですが、ネットでいろいろな方たちとつながったことで、いままでにはない広い世界を見ることができるようになりました。同時に、自分の考えを持って個人として生きるという自覚が少しずつ育まれたんだと思います。
そうやってパソコンに親しんで行く中で、自分がやりたいことをとにかくやってみようという気持ちが大きくなって、エクセルアートやアプリを作るようになったんです。
やりたいことが
どんどんあふれて来る
私は、好奇心旺盛な「面白がり屋」なんです。園遊会にお招きいただいたときは、エクセルアートをプリントした服とLEDで光るバッグを作って参加しました。この間は3Dプリンターでペンダントを作ったんですよ。全部面白そうだと思うからやっているんです。ありがたいことに、自分ができないことやわからないことは、周りの仲間が一緒になって手伝ってくれるんです。だから、ついつい甘えて、何か面白いことを思いつくとまたやりたくなっちゃう。私の場合、夢を持つというより、その時々でやりたいことがどんどんあふれてきてしまうという感じです。
人工知能の時代に向けて
子どもたちの創造力を育む
2020年からプログラミング教育が小学校で必修化されるということで、最近は小学生に人工知能やプログラミングについて話をする機会も多くなりました。そこでは、子どもたちに「創造的に生きよう。お手本通りや人の真似ばかりじゃダメよ」と伝えています。
いろいろな分野で人工知能が活躍する時代になると、人間は人工知能と二人三脚で生きていくことになります。だからこそ、今の子どもたちには、人工知能には担えない創造力が求められます。そのためには、なによりも人間力が必要であり、子どもたちは、リアルな体験を通じて人間力を高めていく必要があると思うんです。
物事を面白がる気持ちを
心の中に作っておく
夢を持ったり、なにかをやりたいと思う時、人生に遅すぎるということはありません。私は81歳で花開いたんですから。すべては自分の気持ち次第なんです。なにかを楽しんだり発見するためのゆとりを、ちょっとでもよいから自分の心の中に作っておく。やっぱり、いろんなことを面白がることが大切なんだと思います。
もうひとつ思うことは、やっぱりリアルな体験が大事だということ。これまでに、蕾とか根っことかをいっぱい育む時間があったからこそ、80歳を過ぎた私も花を咲かすことができたのかなという気がします。
プログラマー
若宮 正子
1935年東京生まれ。
東京教育大学附属高等学校(現・筑波大学附属高等学校)卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)へ勤務。
定年をきっかけに、パソコンを独自に習得し、同居する母親の介護をしながらパソコンを使って世界を広げていく。
1999年にシニア世代のサイト「メロウ倶楽部」の創設に参画し、現在も副会長を務めているほか、NPO法人ブロードバンドスクール協会の理事として、シニア世代へのデジタル機器普及活動に尽力している。
2016年秋からiPhoneアプリの開発をはじめ、2017年6月には米国アップルによる世界開発者会議「WWDC 2017」に特別招待される。
安倍政権の看板政策「人づくり革命」の具体策を検討する「人生100年時代構想会議」の最年長有識者メンバーにも選ばれた。